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インターネットに関連する技術の中で、IPアドレスの仕組みは重要な要素です。私たちが普段使っているスマートフォンやパソコン、さらには企業のサーバーやクラウドサービスに至るまで、すべてがIPアドレスを通じて通信を行っています。本記事では、「IPアドレスのクラス」について、クラスA~Eについて解説していきます。
IPアドレスのクラスについて
IPアドレスのクラスは、IPv4アドレスを設計時の用途やネットワークの規模に応じて分類する方法で、アドレスの先頭ビットを基にA~Eの5つのクラスに分けられます。
そもそもIPアドレスとは
IPアドレス(Internet Protocol Address)は、インターネットやローカルネットワーク上の機器を一意に識別するための番号です。IPv4では「192.168.1.1」のように、4つの10進数(それぞれ0〜255)をドットで区切った形式(ドット10進表記)で表されます。各機器は、このIPアドレスを使ってデータを送受信し、通信を成立させています。
なお、現在ではIPv6という新しい形式もありますが、本記事では旧来から広く使用されているIPv4を中心に説明します。
IPアドレスのクラス分類
IPアドレスは、かつてその用途やネットワーク規模に応じて「クラス」という方式で分類されていました。この方式は1980年代から1990年代初頭にかけて一般的でしたが、現在ではより柔軟な方式であるCIDR(Classless Inter-Domain Routing)に取って代わられています。ただし、IPアドレスの基礎を学ぶうえで、クラス分類は今でも重要な知識です。
IPアドレスのクラス一覧
以下にIPアドレスクラスの範囲を示します。
クラス | IPアドレス範囲 | 用途 | ネットワーク部 | ホスト部 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|---|
A | 0.0.0.0 ~ 127.255.255.255 | 大規模ネットワーク | 8ビット | 24ビット | 127.x.x.x はループバック用 |
B | 128.0.0.0 ~ 191.255.255.255 | 中規模ネットワーク | 16ビット | 16ビット | - |
C | 192.0.0.0 ~ 223.255.255.255 | 小規模ネットワーク | 24ビット | 8ビット | 最大254ホスト |
D | 224.0.0.0 ~ 239.255.255.255 | マルチキャスト通信 | - | - | - |
E | 240.0.0.0 ~ 255.255.255.255 | 研究用/予約済みアドレス | - | - | - |
クラスA~Eの2進数表記一覧
各クラスの2進数表記は以下の通りです。
クラス | 範囲(2進数) |
---|---|
A | 00000000.00000000.00000000.00000000 ~ 01111111.11111111.11111111.11111111 |
B | 10000000.00000000.00000000.00000000 ~ 10111111.11111111.11111111.11111111 |
C | 11000000.00000000.00000000.00000000 ~ 11011111.11111111.11111111.11111111 |
D | 11100000.00000000.00000000.00000000 ~ 11101111.11111111.11111111.11111111 |
E | 11110000.00000000.00000000.00000000 ~ 11111111.11111111.11111111.11111111 |
クラスA~Eの判別方法
- 先頭ビットでクラスを判別します。
- Aクラス: 先頭ビットが
0
。 - Bクラス: 先頭ビットが
10
。 - Cクラス: 先頭ビットが
110
。 - Dクラス: 先頭ビットが
1110
。 - Eクラス: 先頭ビットが
1111
。
- Aクラス: 先頭ビットが
クラスA~Eの詳細
以下では、IPアドレスのクラスA〜Eまでを詳しく見ていきましょう。
クラスAは大規模ネットワーク向け
クラスAは、最も広いホスト部を持つため、巨大なネットワーク構成が可能です。一部のIP帯(たとえば127.0.0.1)は「ループバックアドレス」として予約されており、実際の通信には使用されません。
-
範囲:
0.0.0.0
~127.255.255.255
(先頭ビットが0)
-
用途:
- 大規模なネットワーク
- 例:大企業やプロバイダー、国の機関など
-
ネットワーク部/ホスト部:
- ネットワーク部: 8ビット(最初の1オクテット)
- ホスト部: 24ビット
-
利用可能なネットワーク数:
- 126個
- 先頭8ビットがネットワークアドレスに使用され、2つは特別な用途(ループバックやブロードキャストアドレスなど)に予約されている。最上位ビットが0のため、2の7乗(128)から2を引き126個が利用可能。
- 126個
-
1ネットワークあたりの最大ホスト数:
- 1つのネットワークで16,777,214台のホストを持てる。
-
予約範囲:
127.x.x.x
はループバックアドレスとして予約されている。10.0.0.0
~10.255.255.255
(10.0.0.0/8)はプライベートIPとして予約されている。
クラスBは中規模ネットワーク向け
クラスBは、バランスの取れた構成で、大学や中堅企業などによく利用されてきました。クラスAよりも多くのネットワークに分割できるため、より柔軟な運用が可能です。
- 範囲:
128.0.0.0
~191.255.255.255
(先頭ビットが10
)
- 用途:
- 中規模なネットワーク
- 大学や中規模企業向け
- 中規模なネットワーク
- ネットワーク部/ホスト部:
- ネットワーク部: 16ビット
- ホスト部: 16ビット
- 利用可能なネットワーク数: 約16,000個
- 1ネットワークあたりの最大ホスト数:
- 1つのネットワークで65,534台のホストを持てる。
- 予約範囲:
172.16.0.0
~172.31.255.255
(172.16.0.0/12)はプライベートIPとして予約されている。
クラスCは小規模ネットワーク向け
クラスCは、IPアドレスの中でもっとも多くのネットワークを提供できる設計です。中小企業や家庭用ルーターなど、限られたホスト数で十分な環境に最適です。 個人PCなどのローカルIPアドレス(プライベートIP)でよく利用する192.168.x.xはクラスCに分類されます。
- 範囲:
192.0.0.0
~223.255.255.255
(先頭ビットが110
) - 用途:
- 小規模ネットワーク(中小企業)や個人のネットワーク環境・LAN向け
- ネットワーク部/ホスト部:
- ネットワーク部: 24ビット
- ホスト部: 8ビット
- 利用可能なネットワーク数: 約209万個
- 1ネットワークあたりのホスト数: 最大254台(0と255は予約)
- 予約範囲:
192.168.0.0
~192.168.255.255
(192.168.0.0/16)はプライベートIPとして予約されている。
クラスDはマルチキャスト通信用
クラスDは、ビデオ配信や音声会議など、複数の受信者に同時にデータを送信する用途で使用されます。ユニキャスト(一対一)やブロードキャスト(一対全)とは異なり、指定されたグループのみに配信(マルチキャスト)される点が特徴です。
- 範囲:
224.0.0.0
から239.255.255.255
(先頭ビットが1110
) - 用途:
- 一対多の通信専用
- マルチキャスト(特定のグループ宛のデータ送信)
- 一対多の通信専用
- 特徴:
ネットワーク/ホスト部分の区別がない。
クラスEは予約済みアドレス
クラスEは、標準的なネットワーク通信では利用されず、主に将来の技術開発や研究目的で予約されています。(研究開発用)そのため、通常の運用環境では見かけることはほとんどありません。
- 範囲:
240.0.0.0
から255.255.255.255
(先頭ビットが1111
) - 用途:
- 研究・実験用・将来の用途向け(予約済みアドレス)
- 特徴:
- 一般の通信では使用されない
クラスベースからCIDR(クラスレス)への移行
従来のクラスベースのIPアドレス割り当ては、柔軟性が乏しく、アドレスの浪費が問題となっていました。そのため、1993年にCIDR(サイダー:Classless Inter-Domain Routing)が導入され、現在ではこれが主流となっています。
CIDRでは、IPアドレスにネットマスクの長さ(例:192.168.0.0/24)を明示的に付け加えることで、より柔軟で効率的なアドレス管理が可能になります。これにより、細かいネットワークの分割や、IPの節約が実現されています。
IPアドレスクラスまとめ
IPアドレスのクラスは、現在では使用頻度が少なくなっていますが、ネットワーク技術を学ぶうえで大切な知識です。クラスA〜Eまでの各分類には、それぞれ異なる構造と用途があり、それを理解することでIPアドレスの設計やネットワーク構築の基本が身につきます。CIDRのような現代的な方式とあわせて理解することで、より実践的なネットワークスキルを身につけることができるでしょう。
今後もインターネット技術の進化に伴い、IPアドレスの使い方は変化していきますが、基礎をおさえることでその変化にも柔軟に対応できるようになります。
以上で本記事の解説を終わります。
よいITライフを!