【基本情報】稼働率の計算方法(MTBF,MTTR)

【基本情報】稼働率の計算方法(MTBF,MTTR)

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本記事では、基本情報技術者試験で出題される「稼働率」「MTBF(平均故障間隔)」「MTTR(平均修復時間)」について、定義や計算式をわかりやすく解説します。稼働率をMTBF・MTTRから求める方法に加え、システム全体の稼働率を直列構成・並列構成別に計算する手法まで網羅的に紹介します。


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基本情報技術者試験では、システム運用や保守に関する知識も問われます。その中でも特に頻出するテーマの一つが、「稼働率」「MTBF(Mean Time Between Failures:平均故障間隔)」「MTTR(Mean Time To Repair:平均修復時間)」に関する問題です。

MTBF(Mean Time Between Failures)MTTR(Mean Time to Repair) は、システムの信頼性や保守性を評価するための指標です。
これらは主に、機械や設備、ITシステムなどの稼働時間や障害時の修理時間を分析するために使用されます。

MTBFやMTTRは、ITシステムや装置の稼働状況や信頼性を把握するために重要なものです。また、実際の運用現場でも頻繁に用いられており、エンジニアとしての基本的な素養といえるでしょう。本記事では、それぞれの指標の定義や意味、そして計算式について詳しく解説します。

稼働率は正常稼働している時間の割合

稼働率(Availability)とは、あるシステムや機器が「指定した期間に正常に稼働している時間」の割合を示す指標です。稼働率はシステムがどれくらいの時間、正常に稼働していたのかを定量的に評価するために使われます。一般的に、システムの信頼性や安定性を評価するために使用され、特に24時間365日稼働が求められるサーバーやネットワーク設備などで重要視されます。

稼働率を求める計算式

稼働率は、以下の計算式で求められます。

稼働率の計算式
稼働率 (%) = (稼働時間 / 総時間) × 100
= (稼働時間 ÷ (稼働時間 + 故障時間)) × 100
  • 稼働時間:システムが正常に動作していた時間。
  • 総時間:観測対象期間全体の時間。稼働時間故障時間に分解できる。

たとえば、あるWebサーバが1週間(168時間)のうち160時間正常に稼働し、8時間停止していたとします。このとき、稼働率は次のように計算できます。

稼働率の計算例
稼働率 = 160 ÷(160+8)= 160 ÷ 168 ≒ 0.952(つまり、95.2%)

稼働率が高いということは、それだけ利用者にとってサービスが安定して利用できたということを意味し、逆に稼働率が低ければ、頻繁に障害が発生していたことになります。

稼働率のダウンタイム

システム稼働率の高さにファイブナイン(5つの9)という表現が使われます。

  • 99.9%(3つの9): 月に約43分のダウンタイム
  • 99.99%(4つの9): 月に約4分のダウンタイム
  • 99.999%(5つの9): 月に約26秒のダウンタイム

上記の通り、9の数でこれだけ停止時間に差が出ることがわかります。

稼働率の向上方法

システムの稼働率を高めるためには、以下のような対策が有効です。

  1. 冗長化:バックアップや代替システムを用意し、障害発生時にシステムが自動的に切り替わる仕組みを構築する。
  2. 定期メンテナンス:事前に問題を防ぐための保守作業を定期的に行う。
  3. 監視とアラート:システムの状態をリアルタイムで監視し、異常を検知したら即座に対処できるようにする。
  4. 自動復旧機能:自動で再起動や修復ができる機能を組み込むことで、障害発生時の復旧時間を短縮する。

稼働率が高いほどシステムの信頼性も高まりますが、システム構築や維持にはコストが伴うため、業務ニーズに応じた適切なレベルを設定することが重要です。

MTBFは次の故障が発生するまでの平均時間

MTBFは「平均故障間隔」を意味し、 システムが正常に稼働してから次の故障が発生するまでの平均時間 を示します。どれくらい長い時間、システムが連続して正常に動作しているかを把握するための指標です。MTBFが長いほど、システムの信頼性が高いと見なされます。

MTBFを求める計算式

計算式は次の通りです。

MTBFの計算式
MTBF = 稼働時間の合計 ÷ 故障回数
  • 稼働時間の合計:観測期間中のシステムの稼働時間。
  • 故障回数:観測期間中に発生した故障の回数。

例えば、システムが1000時間稼働し、その間に2回故障が発生した場合、MTBF は以下のように計算されます。

MTBFの計算例
MTBF = 1000 ÷ 2 = 500 時間

MTBF が高いほど、システムの信頼性が高く、故障しにくいことを意味します。

MTTRは故障から復旧するまでの平均時間

MTTRは「平均修復時間」を意味し、 システムが故障から復旧するまでにかかる平均時間 を示します。
MTTRが短いほど、トラブルからの復旧が迅速であることを意味し、システムの運用効率や稼働率の向上につながります。

保守・運用の現場では、この時間をいかに短縮するかが重要な課題となります。保守体制の強化や、自動復旧機能の導入などによって、この値を下げることが可能です。

MTTRを求める計算式

以下の式で求めます。

MTTRの計算式
MTTR = 修復時間の合計 ÷ 故障回数
  • 修復時間の合計:観測期間中の故障ごとの修理時間の合計。
  • 故障回数:観測期間中に発生した故障の回数。

例えば、3回の故障でそれぞれ1時間、2時間、1時間の修復時間がかかった場合、MTTR は以下のように計算されます。

MTTRの計算例
MTTR = (1 + 2 + 1) / 3 = 1.33 時間

MTTR が短いほど、障害からの復旧に要する時間が短く、迅速な対応ができていると評価されます。

MTBFとMTTRから稼働率を求める方法

MTBF(Mean Time Between Failures)とMTTR(Mean Time to Repair)を用いて稼働率を求める方法は、以下の計算式の通りです。

稼働率を求める計算式(MTBF+MTTR)

MTBFとMTTRを使って稼働率を求めることができます。

稼働率の計算式(MTBFとMTTRを使用)
稼働率 (%) = (MTBF ÷ (MTBF + MTTR)) × 100
  • MTBF:平均故障間隔。システムが正常に稼働している時間の平均。
  • MTTR:平均修復時間。故障から復旧するまでにかかる平均時間。

これにより、システムの全体的な稼働状況を把握でき、稼働率を高めるには以下の2つが鍵となります。

  1. MTBFを伸ばす(=故障頻度を減らす)
  2. MTTRを短縮する(=修復時間を減らす)

この2つの取り組みは、単に試験のための知識としてだけでなく、実際のシステム運用においても重要課題の一つとなります。

稼働率の計算例

例えば、MTBF が 500 時間、MTTR が 5 時間の場合、稼働率は次のように計算されます。

稼働率 = (500 / (500 + 5)) × 100 = (500 / 505) × 100 = 99.01%

この計算結果から、システムの稼働率は約99.01%であることがわかります。
これにより、システムの信頼性や稼働状況を評価することができます。

MTBFとMTTRからわかることまとめ

  • システム信頼性の評価:MTBF が長く、MTTR が短いシステムは「故障が少なく、故障が発生しても早く復旧できる」と評価され、信頼性が高いとされます。
  • 予防保守:MTBF をもとに、定期的な点検やメンテナンスを行うスケジュールを決めることで、故障を未然に防ぐことができます。
  • リスク評価:MTTR を把握することで、万一の故障時のダウンタイムの影響を評価し、対策を検討することができます。

システム全体の稼働率を求める方法

複数の装置やシステムから構成されている「システム全体」の稼働率を求める場合、それぞれの構成要素の稼働率と構成方法(直列か並列か)を考慮する必要があります。

● 直列構成の場合

直列構成とは、すべての構成要素が正常に動作していないと、システム全体が機能しない構成です。たとえば、A → B → C のように処理が流れるシステムでは、1つでも停止すれば全体が停止します。

直列構成の稼働率は、各構成要素の稼働率を掛け合わせて求めます。

全体稼働率 = Aの稼働率 × Bの稼働率 × Cの稼働率

例:A, B, C の各稼働率がそれぞれ 0.99, 0.98, 0.97 の場合、

全体稼働率 = 0.99 × 0.98 × 0.97 ≒ 0.941

このように、直列構成では構成要素が増えるほど、全体の稼働率は下がりやすくなる特徴があります。

● 並列構成の場合

並列構成とは、いずれかの構成要素が動作していればシステム全体が機能する構成です。冗長構成やクラスタ構成がこれにあたります。

並列構成の稼働率は、以下のように計算します。

全体稼働率 = 1 −(1 − Aの稼働率)×(1 − Bの稼働率)

例:A, B の稼働率がそれぞれ 0.90, 0.85 の場合、

全体稼働率 = 1 −(1 − 0.90)×(1 − 0.85)= 1 −(0.10 × 0.15)= 0.985

このように、並列構成では冗長性によりシステムの可用性を高めることが可能です。

この構成の違いによる稼働率の変化は、システム設計において極めて重要な要素であり、試験においても出題されること多いです。

基本情報技術者試験における出題傾向

基本情報技術者試験では、用語の意味を問うだけでなく、実際に計算式を適用する問題も出題されます。システム全体の稼働率やMTBFとMTTRから稼働率を計算させる問題が多く見られます。  

問題の形式としては、選択肢式や計算式を選ばせる形式が一般的です。どの数値を使うべきか、どの計算式を適用すべきかをしっかり判断する力が求められます。

また、最近ではクラウドや仮想化技術の普及に伴い、システムの可用性設計がより重要になってきているため、これらの信頼性指標の重要性はますます増しています。

過去問題

システム全体の稼働率
基本情報技術者平成19年秋期問34 基本情報技術者平成21年春期問16

MTBFとMTTRから稼働率を求める
基本情報技術者平成28年秋期問15
基本情報技術者令和6年問4

MTBFとMTTRの理解
基本情報技術者平成27年秋期問14

稼働率・MTBF・MTTRまとめ

  • 稼働率は「システムが使える割合」を示す重要な指標であり、実務でも試験でも重要。
  • MTBFは「平均故障間隔」。この値が大きいほど、長時間安定して稼働できるシステムと言える。
  • MTTRは「平均修復時間」。この値が小さいほど、障害発生後の復旧が早いことを意味する。
  • 稼働率はMTBFとMTTRのバランスによって決まる。両者を改善することで稼働率の向上が可能。
  • 基本情報技術者試験では、これらの用語や計算式に関する知識と、それを使った計算問題がよく出題される。

これらの内容は、単に試験対策にとどまらず、実際の業務や今後のキャリアにおいても非常に役立ちます。ぜひ公式テキストや過去問題集を活用して、しっかりと理解と練習を積み重ねておきましょう。

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以上で本記事の解説を終わります。
よいITライフを!
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