npmとYarn、開発者が知るべき違いとは?

npmとYarn、開発者が知るべき違いとは?

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npmとYarn、JavaScript開発者にとって欠かせないパッケージマネージャーですが、結局どちらを使えばいいのか、そのnpm yarn 違いは何なのか、迷うことはありませんか?本記事では、両者の基本的な役割からインストール速度、依存関係の解決、セキュリティ機能、CLIコマンドまで、具体的な違いを徹底比較します。


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npmとYarn、JavaScript開発者にとって欠かせないパッケージマネージャーですが、結局どちらを使えばいいのか、そのnpm yarn 違いは何なのか、迷うことはありませんか?本記事では、両者の基本的な役割からインストール速度、依存関係の解決、セキュリティ機能、CLIコマンドまで、具体的な違いを徹底比較します。

最新の動向を踏まえ、あなたのプロジェクトに最適な選択ができるよう、選び方や使い分けのポイントを初心者にもわかりやすく解説。もうパッケージマネージャー選びで悩むことなく、効率的な開発環境を構築しましょう。

npmとYarnの基本的な役割と歴史的背景:JavaScript開発を支える二大巨頭

JavaScript開発において、プロジェクトの依存関係を効率的に管理することは不可欠です。この重要な役割を担うのが「パッケージマネージャー」であり、その代表格がnpmYarnです。本セクションでは、これら二つのツールの共通の役割、それぞれの誕生の背景、そしてJavaScriptエコシステムにおける現在の位置づけを深く掘り下げていきます。

パッケージマネージャーとは?npmとYarnの共通の役割

まず、npmYarnを理解する上で欠かせないのが「パッケージマネージャー」という概念です。

パッケージとは?

「パッケージ」とは、特定の機能を持つ再利用可能なコードのまとまりを指します。例えば、日付操作ライブラリ、HTTPリクエストライブラリ、UIコンポーネントライブラリなどがこれにあたります。これらは世界中の開発者によって作成され、公開されています。

パッケージマネージャーの役割

プロジェクトを開発する際、私たちはゼロからすべてを記述するのではなく、これらの既存のパッケージを組み合わせて利用することがほとんどです。パッケージマネージャーは、この「パッケージの管理」を専門とするツールであり、主に以下の機能を提供します。

  • パッケージのインストール: 必要なパッケージをインターネット上のリポジトリからダウンロードし、プロジェクトに追加します。
  • 依存関係の解決: あるパッケージが別のパッケージに依存している場合(例:ABに依存)、それらすべての依存関係を自動的に特定し、インストールします。
  • パッケージの更新: インストール済みのパッケージを最新バージョンに更新します。
  • パッケージの削除: 不要になったパッケージをプロジェクトから削除します。
  • バージョン管理: パッケージの特定のバージョンを指定してインストールしたり、バージョン間の競合を防いだりします。

JavaScript開発、特にNode.js環境やモダンなフロントエンドフレームワーク(React, Vue, Angularなど)では、数多くのパッケージを組み合わせてアプリケーションを構築します。そのため、npmYarnのようなパッケージマネージャーは、プロジェクトの効率的な開発とメンテナンスにおいて、まさに心臓部とも言える重要な役割を担っています。

npmの誕生と進化:JavaScriptエコシステムの標準

npm (Node Package Manager) は、JavaScriptエコシステムにおける最初の本格的なパッケージマネージャーであり、長らくその標準としての地位を確立してきました。

Node.jsの登場とnpmの誕生

2009年にRyan Dahlによって発表されたNode.jsは、JavaScriptをブラウザの外、つまりサーバーサイドやデスクトップアプリケーション開発で実行できる画期的なプラットフォームでした。Node.jsの登場により、JavaScript開発の可能性は飛躍的に広がりましたが、同時に「モジュール(パッケージ)をどのように管理するか」という新たな課題が浮上しました。

この課題を解決するために、Isaac Schlueterが2010年にnpmを開発しました。当初はNode.jsの公式パッケージマネージャーとして、Node.jsのインストール時に自動的にバンドルされる形で提供され、JavaScriptモジュールの共有と再利用を劇的に容易にしました。

npmレジストリの役割

npmの成功の鍵の一つは、世界最大のソフトウェアレジストリである「npmレジストリ」の存在です。開発者は自身の作成したパッケージをnpmレジストリに公開し、他の開発者はnpm install <package-name>コマンド一つで、そのパッケージを自身のプロジェクトに組み込むことができるようになりました。

npmレジストリの規模

  • 公開パッケージ数: 数百万規模
  • ダウンロード数: 数兆回規模/年

この圧倒的な規模と使いやすさにより、npmは瞬く間にJavaScript開発のデファクトスタンダードとなり、現代のJavaScriptエコシステムの基盤を築き上げました。

npmの進化と初期の課題

npmは、その誕生以来、継続的に機能改善とパフォーマンス向上を重ねてきました。しかし、初期のバージョンでは、特に大規模プロジェクトにおいていくつかの課題も抱えていました。

  • インストール速度: 依存関係の解決とファイルのダウンロードに時間がかかることがありました。
  • 一貫性: 異なる環境でnpm installを実行した際に、全く同じ依存関係ツリーが再現されないことがあり、“It works on my machine”問題を引き起こす要因となることもありました。
  • セキュリティ: パッケージの脆弱性に対する監査機能が不十分でした。

これらの課題が、新たなパッケージマネージャーの登場を促すことになります。

Yarn登場の背景:npmが抱えていた課題とFacebookの挑戦

npmがJavaScriptエコシステムの標準として君臨する中、大規模な開発組織では、その限界が顕在化し始めていました。特に、Facebook (現Meta) のような巨大なモノレポ(単一のリポジトリで複数のプロジェクトを管理する形式)を扱う企業では、npmの課題が深刻な問題となっていたのです。

npmが抱えていた具体的な課題

Facebookのエンジニアチームが直面していたnpmの主な課題は以下の通りでした。

  1. インストール速度のボトルネック: 大規模なプロジェクトでは、依存関係の数が膨大になり、npm installの実行に数分から数十分かかることがありました。これは開発者の生産性に大きな影響を与えます。
  2. 依存関係の再現性の欠如: npmの初期バージョンでは、package.jsonファイルだけでは依存関係の完全な再現が保証されませんでした。同じpackage.jsonを使っていても、環境やインストールタイミングによってnode_modulesの内容が微妙に異なることがあり、CI/CD環境でのビルド失敗や開発者間の不整合の原因となっていました。
  3. ネットワーク接続への依存: インストールごとにパッケージをダウンロードするため、ネットワーク接続が不安定な環境では問題が発生しやすく、オフライン環境での開発が困難でした。
  4. セキュリティへの懸念: パッケージの信頼性や潜在的な脆弱性に対する組み込みの監査機能が不十分でした。

Facebookの挑戦とYarnの誕生

これらの課題を解決するため、FacebookはGoogle、Tildeといった企業と協力し、2016年に全く新しいJavaScriptパッケージマネージャー「Yarn」をオープンソースとして発表しました。

Yarnは、npmの既存のパッケージレジストリを利用しつつも、以下の点を大幅に改善することを目指しました。

  • 高速性: 並列処理とキャッシュ機構を導入し、インストール速度を劇的に向上させました。
  • 信頼性: yarn.lockというロックファイルを導入し、依存関係ツリーの完全な再現性を保証しました。これにより、異なる環境でも常に同じnode_modulesが生成されるようになりました。
  • セキュリティ: インストール前にパッケージの整合性をチェックする機能や、決定論的なインストールプロセスにより、依存関係の整合性と再現性が高く、結果として安全性の高い運用が可能でした。
  • オフラインモード: ローカルキャッシュを活用することで、一度インストールしたパッケージはオフラインでも再インストールできるようになりました。

Yarnの登場は、JavaScript開発コミュニティに大きな衝撃を与え、npmの独占状態に一石を投じることとなりました。

npmとYarnの位置づけ

Node.js エコシステムでは、現在も npm が「デフォルトかつ最大シェア」のパッケージマネージャーとして中心的な役割を担っています。 一方で Yarn は、特にモノレポや高度なワークスペース管理が必要なプロジェクトで選好されるツールへとポジションを移しつつあり、加えて近年は pnpm という第三の選択肢も急速に存在感を増しています。

npm:デフォルトで最大シェア

  • Node.js に標準バンドルされており、依然として最も広く使われているパッケージマネージャー。
  • package-lock.json による再現性や npm audit、ワークスペース機能の導入により、かつて指摘されていた多くの課題は大きく改善されている。
  • その結果、「特に理由がなければ npm」という選択が依然として多数派であり、学習コストの低さとエコシステムの広さが強みになっている。

Yarn:モノレポと高度なワークスペースに強み

  • Yarn v1(Classic)はかつて「高速な npm 代替」として広く使われたが、現在主流となりつつあるのは v2 以降の Yarn Berry であり、思想がかなり異なる「別物」に近い存在となっている。
  • Berry では Plug’n’Play(PnP)や Zero-Install、柔軟なワークスペースとプラグイン機構など、npm とは大きく異なる設計を採用しており、特に大規模モノレポや厳密な依存関係管理・キャッシュ戦略を求めるプロジェクトで強みを発揮する。
  • 一方で、PnP による互換性問題や設定の複雑さもあり、シンプルさを重視するチームが npm や pnpm を選ぶケースも増えている。

npmとYarnの具体的な機能・パフォーマンスの違いを徹底比較

前章では、npmとYarnがどのような背景から生まれ、それぞれがどのように進化してきたか、そして現在のJavaScriptエコシステムにおける位置づけについて解説しました。ここでは、これら二つの主要なパッケージマネージャーが持つ具体的な機能やパフォーマンスの差異に焦点を当て、開発者が日々の業務で直面するであろう実用的な側面に深く切り込んでいきます。

インストール速度とキャッシュの仕組み

パッケージのインストール速度は、開発者の生産性に直結する重要な要素です。プロジェクトの初期セットアップや新しい依存関係の追加、CI/CDパイプラインにおけるビルド時間など、様々な場面でその影響を感じることになります。npmとYarnは、このインストール速度を向上させるためにそれぞれ独自のキャッシュ戦略と並列処理の最適化を行ってきました。

npmとYarnのキャッシュ戦略の違い

パッケージマネージャーは、一度ダウンロードしたパッケージをローカルに保存(キャッシュ)することで、次回以降のインストール時間を短縮します。これにより、ネットワーク負荷の軽減と、より高速なインストールが可能になります。

  • npmのキャッシュ戦略:

    • npmは、ダウンロードしたパッケージをユーザーのホームディレクトリ内にあるグローバルキャッシュ(通常は ~/.npm または ~/.npm/_cacache)に保存します。
    • インストール時に、まずこのキャッシュディレクトリを確認し、必要なパッケージが存在すればネットワークアクセスなしで利用します。
    • キャッシュの管理は比較的シンプルで、npm cache clean --force コマンドでクリアできます。
  • Yarnのキャッシュ戦略:

    • Yarn はバージョンによってキャッシュ周りの挙動が異なります。Yarn v1(Classic)では一般的に ~/.yarn/cache が用いられ、Yarn v2 以降(Berry)ではプロジェクト配下の .yarn/cache を使う構成や、Plug’n’Play(PnP)を前提とした管理方式など、より柔軟な運用が可能になっています。 一度インストールしたパッケージを再利用することでオフラインインストールや高速化を図る、という基本方針はどのバージョンでも共通しています。
    • Yarnは初期バージョンから、オフラインインストールを強く意識したキャッシュメカニズムを持っていました。これにより、一度インストールしたパッケージはインターネット接続がなくても再インストールが可能でした。
    • キャッシュされたパッケージは圧縮されたアーカイブ形式で保存され、効率的に管理されます。yarn cache clean コマンドでキャッシュをクリアできます。

比較表:キャッシュ戦略

特徴npmYarn
キャッシュ場所例: ~/.npm/_cacache など例: ~/.yarn/cache や プロジェクト配下の .yarn
オフライン対応近年のバージョンで対応が強化初期からオフラインを意識した設計
管理コマンドnpm cache clean などyarn cache clean など
保存形式圧縮アーカイブとメタデータの組み合わせ圧縮アーカイブ (.tgz) を中心とした構成

インストール速度のベンチマークと実測値

かつてはYarnnpmに比べて圧倒的なインストール速度を誇っていました。これは、Yarnが複数のパッケージを並行してダウンロード・インストールする仕組みや、より効率的なキャッシュ戦略を採用していたためです。特に大規模なプロジェクトやCI/CD環境では、Yarnの速度が大きなメリットとなっていました。

しかし、npmもバージョン5以降で大幅な改善を遂げました。特にpackage-lock.jsonの導入と並列処理の強化により、その速度差は大きく縮まりました。

現在の状況:

  • 小規模プロジェクト: npmYarnの速度差はほとんど感じられないでしょう。どちらを使っても、数秒程度の差にとどまることがほとんどです。
  • 大規模プロジェクト: 依存関係が非常に多い大規模なプロジェクトでは、Yarn が優位になるケースもありますが、使用する Yarn のバージョンや node_modules / PnP の構成、キャッシュ状態によって結果は大きく変わります。ただし、npmの最新バージョン(例: npm v7/v8)も非常に高速化されており、環境やネットワーク状況によってはnpmが上回ることもあります。
  • CI/CD環境: クリーンな環境での初回インストールでは、キャッシュの有無やネットワーク速度が大きく影響します。キャッシュが効く場合は両者とも高速ですが、キャッシュがない場合はネットワーク速度がボトルネックになりがちです。

実測値の傾向(一般的なベンチマークより):

シナリオnpm (v7/v8)Yarn (v1/v2+)
クリーンインストール速い速い
キャッシュ利用時非常に速い非常に速い
node_modules削除後速い速い

実際のインストール速度は、プロジェクト規模、ネットワーク環境、キャッシュの有無、使用している Node.js/npm/Yarn のバージョンなどに大きく左右されます。そのため、一概に「常にどちらが速い」と言い切ることは難しく、代表的なベンチマークでも結果が分かれることがあります。
一般的な傾向としては、どちらも最新バージョンでは十分高速であり、日常的な開発では決定的な差を感じないケースも多くなっています。

結論として、現代においては「Yarnの方が圧倒的に速い」という認識は必ずしも当てはまりません。両者ともに非常に高いパフォーマンスを実現しており、開発者は速度だけでどちらか一方を選ぶ必要性は薄れています。

依存関係の解決とロックファイルの重要性

JavaScriptプロジェクトの依存関係は複雑になりがちです。あるパッケージが別のパッケージに依存し、さらにそのパッケージが別のバージョンに依存するといった「依存関係のツリー」が形成されます。この依存関係を正確に解決し、プロジェクト全体で一貫性を保つことが、安定した開発環境を構築する上で不可欠です。

package-lock.jsonyarn.lockの役割

npmpackage-lock.jsonYarnyarn.lockは、どちらも「ロックファイル」と呼ばれるもので、プロジェクトの依存関係ツリーを完全に固定する役割を担います。

  • package.jsonの限界: package.jsonには、プロジェクトが直接依存するパッケージとそのバージョン範囲(例: "react": "^18.0.0")が記述されます。しかし、バージョン範囲指定(^~)があるため、開発者がnpm installを実行するタイミングによって、インストールされるパッケージのマイナーバージョンやパッチバージョンが異なる可能性があります。

  • ロックファイルの登場: この問題を解決するために、ロックファイルが導入されました。

    • package-lock.json (npm): npm installを実行した際に、実際にインストールされた全パッケージ(直接依存、間接依存問わず)の正確なバージョン、ダウンロード元URL、ハッシュ値、依存関係ツリーの構造などが記録されます。
    • yarn.lock (Yarn): yarn installを実行した際に、同様にインストールされた全パッケージの詳細な情報が記録されます。Yarnnpmに先駆けてこのロックファイルの概念を普及させました。

ロックファイルの重要性: これらのロックファイルをGitなどのバージョン管理システムにコミットすることで、以下のメリットが得られます。

  1. 環境間の再現性の保証: チームメンバー全員が同じパッケージバージョンで開発でき、CI/CD環境でも全く同じ依存関係が構築されます。「私の環境では動くのに、あなたの環境では動かない」という問題を劇的に減らします。
  2. 予期せぬ変更の防止: 新しいバージョンのパッケージがリリースされても、ロックファイルに記載されたバージョンが優先されるため、意図しない依存関係の更新を防ぎます。
  3. レビューの容易さ: ロックファイルの変更をレビューすることで、どのパッケージが更新されたか、セキュリティパッチが適用されたかなどを確認できます。

ファイルフォーマットの違い: package-lock.jsonはJSON形式ですが、yarn.lockはYAMLライクな独自フォーマットです。機能的な違いはほとんどありませんが、人間が読み解く際には若干の差があります。

決定論的インストールとは

ロックファイルによって実現されるのが「決定論的インストール(Deterministic Install)」です。これは、「常に同じ入力(package.jsonとロックファイル)からは、常に同じ出力(node_modulesディレクトリの内容)が生成される」という特性を指します。

(Yarn v2 以降では node_modules を生成しない構成も含む)

Yarnは初期バージョンからこの決定論的インストールを強く意識しており、その再現性の高さが大きな強みでした。

npmもバージョン5でpackage-lock.jsonを導入して以来、同様に高いレベルでの決定論的インストールを実現しています。

この特性は、特に大規模なチーム開発や本番環境へのデプロイにおいて、予期せぬバグや動作の違いを防ぐ上で極めて重要です。どちらのパッケージマネージャーを使用するにしても、ロックファイルを適切に管理し、バージョン管理システムにコミットすることは、現代のJavaScript開発におけるベストプラクティスとされています。

セキュリティ機能と脆弱性対策

オープンソースソフトウェアの利用が拡大するにつれて、それに伴うセキュリティリスクも増大しています。プロジェクトが依存する何百ものパッケージの中に、既知の脆弱性や悪意のあるコードが紛れ込んでいる可能性は常に存在します。npmとYarnは、これらのリスクから開発者を守るためのセキュリティ機能を提供しています。

パッケージ監査機能(npm audityarn audit

npmYarnは、プロジェクトの依存関係ツリー全体をスキャンし、既知のセキュリティ脆弱性がないかをチェックする監査機能を提供しています。

  • npm audit:

    • npmは、npm auditコマンドを実行することで、プロジェクトのpackage.jsonpackage-lock.jsonに基づいて依存関係を分析し、npmの公開レジストリが管理する脆弱性データベースと照合します。
    • 発見された脆弱性は、深刻度(高、中、低)と修正方法(利用可能な場合はバージョンアップやパッチ適用)とともにレポートされます。
    • npm audit fixコマンドを使用すると、多くの場合、脆弱性を自動的に修正できるバージョンに依存関係を更新してくれます。ただし、メジャーバージョンの更新が必要な場合など、自動修正では対応できないケースもあります。
    • CI/CDパイプラインに組み込むことで、デプロイ前に脆弱性がないかを自動的にチェックすることが推奨されます。
  • yarn audit:

    • Yarnも同様に、yarn auditコマンドを提供しています。このコマンドは、npmが利用するのと同じ脆弱性データベース(または同等の情報源)を利用して、依存関係をスキャンします。
    • レポート形式は異なりますが、脆弱性の種類、深刻度、影響を受けるパッケージ、修正方法などが表示されます。
    • Yarn にも audit 機能はありますが、自動修正機能は npm audit fix と比べると限定的であり、実運用では外部ツールと併用されるケースが多く見られます。

監査機能の重要性: これらの監査機能は、開発者が意識せずに脆弱なパッケージを利用してしまうリスクを大幅に低減します。定期的に実行することで、プロジェクトのセキュリティ状態を健全に保つことができます。

悪意のあるパッケージへの対策

パッケージマネージャーは、単に脆弱性の検出だけでなく、悪意のあるパッケージ自体がレジストリに公開されることを防ぐための対策も講じています。

  • レジストリレベルでの対策:

    • 悪意のあるコードのスキャン: npmjs.comなどの主要なレジストリは、パッケージが公開される前に悪意のあるコードやマルウェアが含まれていないかを自動的にスキャンするシステムを導入しています。
    • タイポスクワッティング対策: 人気のあるパッケージ名に似せた名前(例: reactの代わりにreacct)で悪意のあるパッケージを公開する「タイポスクワッティング」を防ぐため、レジストリ側で類似名の検出や登録制限を行うことがあります。
    • 多要素認証 (2FA): パッケージの公開者がアカウントを乗っ取られることを防ぐため、多要素認証の利用を推奨し、重要パッケージには必須とするなどの対策が進められています。
  • 開発者側の対策:

    • 信頼できるパッケージの選択: 不明な作者やダウンロード数が極端に少ないパッケージの利用は避ける。
    • 定期的な監査: npm audityarn auditを定期的に実行し、脆弱性を早期に発見・修正する。
    • 依存関係の最小化: 不要な依存関係は追加しない。
    • package-lock.json / yarn.lockのレビュー: 不審なパッケージが追加されていないか、バージョンが意図せず変更されていないかを確認する。

これらの多層的なアプローチにより、npmとYarnはJavaScriptエコシステムのセキュリティ向上に貢献しています。

開発現場で考えるnpmとYarnの選び方・使い分け

JavaScript開発プロジェクトにおいて、パッケージマネージャーの選択は開発効率やプロジェクトの安定性に直結する重要な意思決定です。npmとYarnはどちらも強力なツールですが、それぞれの特性を理解し、プロジェクトの状況やチームのスキルセットに合わせて最適な選択をすることが求められます。ここでは、開発現場でnpmとYarnをどのように選び、使い分けるべきかについて具体的に解説します。

プロジェクトの新規立ち上げ時:どちらを選ぶべきか

新しいプロジェクトを始める際、npmとYarnのどちらを選ぶかは、いくつかの要因によって決まります。

デファクトスタンダードとしてのnpmの強み

npmはJavaScriptエコシステムにおいて長らくデファクトスタンダードとしての地位を確立しており、その強みは以下の点にあります。

  • 圧倒的なユーザーベースと情報量: npmは最も広く利用されているため、オンライン上のドキュメント、チュートリアル、Stack Overflowでの解決策など、情報が豊富に存在します。問題が発生した際に解決策を見つけやすいのは大きなメリットです。
  • ほとんどのツールやフレームワークでデフォルト: React、Vue、Angular、Next.jsなど、主要なJavaScriptフレームワークやツールは npm を基準にドキュメントが整備されていることが多く、Yarn や pnpm でも問題なく利用可能です。
  • npm v7以降の機能改善: 近年のnpmはYarnが先行していた機能(ワークスペース、決定論的なpackage-lock.json生成など)を取り込み、パフォーマンスや安定性が大幅に向上しています。これにより、Yarnとの機能差は縮まりつつあります。

Yarnのメリットと考慮事項

Yarnはnpmの課題を解決するために登場した経緯があり、特に以下の点でメリットがあります。

  • 高速なインストール速度: 歴史的にYarnは並列ダウンロードと厳格なキャッシュ戦略により、npmよりも高速なインストールを実現していました。現在のnpmも高速化されていますが、大規模プロジェクトやCI/CD環境ではYarnが優位な場合があります。
  • Plug’n’Play (PnP) モード: Yarn v2 (Berry) 以降で導入されたPnPモードは、node_modulesディレクトリを廃止し、依存関係を直接解決することで、ディスクスペースの節約と起動時間の短縮を実現します。しかし、PnPは一部のツールやIDEとの互換性に課題がある場合があり、導入には学習コストと検証が必要です。
  • 厳格なロックファイル: yarn.lock は初期から厳格な依存関係固定を特徴としていましたが、現在では npm の package-lock.json も同等の再現性を提供します。

チームメンバーの習熟度と特定のフレームワークの推奨

最終的な選択は、チームの状況に大きく依存します。

  • チームメンバーの習熟度: チームメンバーがnpmに慣れている場合、Yarnの導入は学習コストを伴います。特にYarn BerryのPnPのような新しい概念は、既存の知識やツールとのギャップを生む可能性があります。チーム全体の合意形成が重要です。
  • 特定のフレームワークやツールの推奨: 使用するフレームワークやモノレポツール(例: Turborepo, Nx)が特定のパッケージマネージャーのワークスペース機能と相性が良い場合があります。公式ドキュメントで推奨されている方を選ぶのも賢明なアプローチです。

既存プロジェクトでの選択:移行のメリット・デメリット

既存のプロジェクトでパッケージマネージャーを変更することは、メリットとデメリットを慎重に比較検討する必要があります。

npmプロジェクトをYarnに移行するケース

  • メリット:
    • インストール速度の改善: 特に古いnpmバージョンを使用している場合、Yarnへの移行でインストール速度が向上する可能性があります。
    • node_modulesの肥大化対策: Yarn PnPを導入すれば、node_modulesディレクトリのディスク使用量を大幅に削減できます。
    • より厳格な依存関係管理: yarn.lockによる決定論的インストールは、ビルドの再現性を高めます。
  • デメリット:
    • 移行コスト: yarn.lockの生成、CI/CD設定の変更、開発環境のセットアップ調整など、移行作業が必要です。
    • PnPモードの互換性問題: Yarn PnPは革新的ですが、一部のツール、IDE、カスタムビルドスクリプトとの互換性に問題が生じる可能性があります。広範なテストが不可欠です。
  • 移行方法: package-lock.jsonが存在するnpmプロジェクトで、yarn installを実行するとyarn.lockが生成されます。Yarn v2 以降では .yarnrc.yml の生成やCorepack を用いた Yarn バージョン固定も併せて行うのが一般的です。その後、package-lock.jsonnode_modulesを削除し、yarnコマンドに切り替えます。

Yarnプロジェクトをnpmに移行するケース

  • メリット:
    • npmの普及度への回帰: より多くの開発者が使い慣れているnpmに統一することで、新しいチームメンバーのオンボーディングが容易になります。
    • PnPモードによる問題回避: PnPモードで発生していた特定のツールやIDEとの互換性問題を解消できます。
  • デメリット:
    • Yarn独自の機能の喪失: PnPによるディスクスペース削減や高速化といったYarnのメリットを享受できなくなります。
  • 移行方法: yarn.lockを削除し、npm installを実行することでpackage-lock.jsonが生成されます。その後、npmコマンドに切り替えます。

開発ワークフローに合わせた使い分け

パッケージマネージャーの選択は、開発の各フェーズで異なる要件を持つため、ワークフロー全体で最適な選択をすることが重要です。

CI/CD環境での選択

継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)環境では、以下の点が特に重要になります。

  • 安定性と再現性: ロックファイル (package-lock.jsonまたはyarn.lock) の使用は必須です。npm ciyarn install --frozen-lockfileコマンドは、ロックファイルに基づいて依存関係を厳密にインストールし、ビルドの再現性を保証します。
  • 速度: ビルド時間の短縮はCI/CDの効率を向上させます。Yarn の PnP は CI 環境で有利になるケースもありますが、ビルド環境やネイティブ依存の有無によっては設定が複雑化する可能性もあります。
  • ワークスペース: モノレポ構成の場合、npm WorkspacesやYarn WorkspacesをCI/CDで活用することで、関連するパッケージのみをビルド・テストし、効率を高めることができます。

ローカル開発での選択

ローカル開発環境では、開発者の生産性が最優先されます。

  • 開発者の使い慣れたツール: チームメンバーが最も慣れているパッケージマネージャーを選択することで、学習コストを最小限に抑え、開発効率を最大化できます。
  • IDEとの連携: 一部のIDEは特定のパッケージマネージャーの機能(例: Yarn PnP)に対応していない場合があります。開発環境全体の互換性を確認することが重要です。
  • Corepackの活用: Node.jsに組み込まれているCorepackを有効にすることで、プロジェクトのpackage.jsonで指定されたパッケージマネージャー(npm, Yarn, pnpmなど)のバージョンが自動的に適用されます。これにより、開発者は特定のパッケージマネージャーを意識することなく、プロジェクトの要件に合わせたツールを透過的に利用できます。
// package.json の例
{
"name": "my-project",
"version": "1.0.0",
"packageManager": "yarn@3.2.0", // Corepackがこのバージョンを自動的に使用する
"scripts": {
"start": "react-scripts start"
}
}

Corepackを有効にするには、以下のコマンドを実行します。

Terminal window
corepack enable

モノレポ環境での考慮事項

モノレポ(Monorepository)では、複数のプロジェクトやパッケージが一つのリポジトリで管理されます。

  • ワークスペース機能: npm WorkspacesやYarn Workspacesは、モノレポ内の依存関係管理を大幅に簡素化します。これらを使用することで、各パッケージのnode_modulesを共有(hoisting や PnP など、パッケージマネージャーの方式により挙動は異なります)したり、ルートレベルで依存関係を一元管理したりできます。
  • ツールとの連携: Lerna, Turborepo, Nxなどのモノレポ管理ツールは、npm/Yarnのワークスペース機能と連携して動作します。使用するモノレポツールが推奨するパッケージマネージャーを選択するのが一般的です。
  • Yarn Berryの強み: Yarn BerryのPnPとワークスペース機能は、モノレポ環境において特に強力なソリューションを提供します。node_modulesの肥大化を防ぎ、依存関係の解決を高速化することで、大規模なモノレポのパフォーマンスを向上させます。

最新の動向と将来性を見据えた選択

パッケージマネージャーの世界は常に進化しています。最新の動向を把握し、将来性を見据えた選択をすることが長期的なプロジェクト運営において重要です。

npmの進化(npm v7以降の改善)

npmはYarnの登場によって刺激を受け、大きく進化しました。

  • package-lock.jsonの決定論的生成: npm v7以降、package-lock.jsonの生成ロジックが改善され、より一貫性のあるロックファイルが生成されるようになりました。
  • Workspacesの公式サポート: モノレポ対応として、Yarnに続きWorkspaces機能が公式にサポートされました。
  • npm ciの改善: CI/CD環境での利用に特化したnpm ciコマンドは、高速かつ再現性の高いインストールを提供します。

これらの改善により、npmはYarnが先行していた多くの機能を取り込み、両者の機能差は縮小傾向にあります。

Yarn v2+ (Berry) の革新的な機能と採用状況

Yarn Berry(Yarn v2以降)は、従来のパッケージマネージャーの常識を覆す革新的なアプローチを導入しました。

  • Plug’n’Play (PnP): 前述の通り、node_modulesを完全に排除し、依存解決の仕組みを根本的に変更します。これにより、インストール時間の短縮、ディスクスペースの節約、起動時間の改善が期待できます。
  • Zero-Install: パッケージのキャッシュをリポジトリ内にコミットすることで、yarn installコマンドを実行せずにプロジェクトを実行可能にします。CI/CD環境でのセットアップ時間を大幅に短縮できます。
  • Protocol Support: npm:, pnpm:, git:, patch:などのプロトコルをサポートし、異なるパッケージマネージャーのレジストリやカスタムソースから直接パッケージをインストールできます。

Yarn Berryは非常に強力ですが、その革新性ゆえに高い学習コストと既存のツールチェーンとの互換性問題(特にPnPモード)を抱えています。そのため、npmや従来のYarn v1と比較すると、大規模 OSS や先進的な開発チームでは採用例が増えていますが、一般的な業務Web開発では npm や pnpm が主流です。新しいプロジェクトで導入する際は、チームの技術レベルとエコシステム全体との相性を慎重に評価する必要があります。

Corepackの登場とその意味

CorepackはNode.jsに試験的に搭載された機能で、プロジェクトごとに適切なパッケージマネージャーのバージョンを自動的に選択・使用できるようにします。

  • 透過的なパッケージマネージャーの管理: 開発者は特定のパッケージマネージャーをグローバルにインストールする必要がなくなり、プロジェクトのpackage.jsonで指定されたpackageManagerフィールドに基づいて、npm、Yarn、pnpmなどのツールが透過的に利用されます。
  • バージョン管理の簡素化: プロジェクト間で異なるバージョンのパッケージマネージャーが必要な場合でも、Corepackが自動的に適切なバージョンを切り替えてくれるため、開発環境のセットアップが簡素化されます。
  • 将来の標準化: Corepackは、JavaScriptエコシステムにおけるパッケージマネージャーの多様性を吸収し、開発者がよりスムーズにプロジェクトに取り組める未来を示唆しています。

Corepackの登場は、開発者が特定のパッケージマネージャーに固執するのではなく、プロジェクトの要件やエコシステムのトレンドに合わせて柔軟に選択できる環境が整備されつつあることを意味します。これにより、npmとYarnの「どちらか一方」という二元論から、プロジェクトに最適なツールを「使い分ける」という考え方がより一層重要になってくるでしょう。

npmとYarnの最新動向と今後の展望、よくある質問

JavaScriptエコシステムの進化は速く、パッケージマネージャーも例外ではありません。npmとYarnは、互いに切磋琢磨しながら機能強化を続けており、開発者は常に最新の動向を把握しておく必要があります。このセクションでは、それぞれのツールの最新の進化、今後の展望、そして開発者からよく寄せられる質問について深掘りします。

npmの最新動向と進化

npmは、Yarnの登場によって刺激を受け、数々の改善を重ねてきました。特にパフォーマンス、セキュリティ、そして開発者体験の向上に重点が置かれています。

パフォーマンスと機能の向上

npm CLIは、Yarnの高速インストールに追いつくべく、内部的なアルゴリズムの改善を継続的に行っています。例えば、依存関係の解決ロジックの最適化や、並列処理の強化などにより、インストール速度は飛躍的に向上しました。

  • ワークスペース機能の強化: npm v7以降、Yarnが先行していたワークスペース機能が公式にサポートされ、モノレポ(単一のリポジトリで複数のプロジェクトを管理する手法)での開発が非常に容易になりました。これにより、複数のパッケージ間で依存関係を共有し、一元的に管理できるようになります。
    // package.json (root)
    {
    "name": "my-monorepo",
    "workspaces": [
    "packages/*"
    ]
    }
    npm installをルートで実行すれば、すべてのワークスペースの依存関係が解決されます。
  • Corepackへの対応: 前述のCorepackの登場により、npmもCorepack経由で管理可能ですが、Node.js には従来どおり npm が同梱されているため、Yarn や pnpm ほど Corepack の恩恵を強く感じないケースもあります。
  • より堅牢な依存関係解決: package-lock.jsonの構造改善や、より厳密な依存関係の解決ロジックにより、異なる環境間でのビルドの一貫性が向上しています。

セキュリティ機能の継続的強化

npmは、JavaScriptエコシステムのセキュリティを維持する上で中心的な役割を担っています。

  • npm auditの進化: npm auditは、プロジェクトの依存関係ツリーに既知の脆弱性がないかをスキャンし、修正方法を提案する強力なツールです。継続的なデータベースの更新と、より詳細なレポート機能により、開発者はセキュリティリスクを迅速に特定し対処できます。
  • 悪意のあるパッケージへの対策: npmレジストリは、悪意のあるパッケージの検出と削除に積極的に取り組んでいます。不審なアクティビティの監視や、セキュリティチームによるレビュー体制を強化し、サプライチェーン攻撃のリスクを低減しています。

Yarnの最新動向とエコシステム

Yarnは、特にYarn Berry (v2+) の登場により、そのアプローチを大きく変革しました。これにより、新たな可能性と同時に、いくつかの課題も生じています。

Yarn Berry (v2+) の現状と採用

Yarn Berryは、PnPモードを推奨する設計思想を採用していますが、nodeLinker: node-modules を設定することで従来の node_modules 構成も利用可能です。

  • PnPモード: 依存関係をファイルシステムに展開せず、マッピングファイルを通じて直接解決することで、インストール速度の劇的な向上とディスク使用量の削減を実現します。しかし、既存のツールやIDEとの互換性問題が生じる場合があり、.pnp.cjsのような特殊な設定ファイルが必要になることもあります。
  • ワークスペースの強化: モノレポ開発におけるワークスペース機能は、Yarnが特に強みを持つ領域です。Yarn Berryでは、nohoistオプションなど、より柔軟なワークスペース管理が可能になり、大規模なモノレポでの開発体験を向上させています。
  • エコシステムの成熟: PnPモードは当初、多くのツールとの互換性問題がありましたが、現在では主要なビルドツール(Webpack, Babelなど)やIDE(VS Codeなど)がYarn Berryに公式または非公式に対応し始めています。ただし、一部のニッチなツールやレガシープロジェクトでは、まだ課題が残る場合があります。

コミュニティと今後の展望

Yarnは、Facebook(現Meta)によって開発されましたが、現在はコミュニティ主導で活発に開発が進められています。PnPモードのような革新的なアプローチは、将来のパッケージ管理のあり方を示唆しています。しかし、その学習コストや移行の複雑さから、特に既存のプロジェクトや大規模なチームでは、Yarn Classic (v1) やnpmが依然として主流であるケースも少なくありません。

npmとYarnの共存と使い分けのベストプラクティス

Corepackの登場が示すように、もはや「npmかYarnか」という二元論ではなく、プロジェクトの特性やチームの習熟度に応じて最適なツールを選択し、必要に応じて使い分ける時代へと移行しています。

Corepackによるシームレスな切り替え

Corepackは、package.jsonpackageManagerフィールドにnpm@<version>yarn@<version>のように指定するだけで、プロジェクトに適切なパッケージマネージャーを自動的に使用できる画期的な機能です。

package.json
{
"name": "my-project",
"version": "1.0.0",
"packageManager": "yarn@3.2.0", // または "npm@8.5.0", "pnpm@7.0.0"
"dependencies": {
// ...
}
}

これにより、開発者は特定のパッケージマネージャーをグローバルにインストールする必要がなくなり、複数のプロジェクトで異なるツールやバージョンをストレスなく扱えるようになります。

プロジェクトタイプによる選択基準

  • 新規プロジェクト:
    • npm: 安定性、広範なサポート、豊富なドキュメントを重視する場合。多くのテンプレートやフレームワークがnpmをデフォルトとしています。
    • Yarn Classic (v1): 既存プロジェクトで採用されており、現状維持を優先する場合。ただし新規プロジェクトでの採用は現在あまり推奨されません。
    • Yarn Berry (v2+): PnPモードによる超高速インストール、ディスク容量削減、厳密な依存関係管理を追求し、新しい技術への適応力があるチームの場合。特にモノレポでの開発において強力な選択肢となり得ます。
  • 既存プロジェクト: 既存のパッケージマネージャーを維持するのが一般的です。切り替えにはリスクが伴うため、明確なメリットが見込まれる場合に限り、慎重に検討すべきです。
  • モノレポ: npmのワークスペース、Yarnのワークスペース(特にBerry)はどちらも強力な選択肢です。チームの習熟度や特定の機能(例: Yarn BerryのPnP)の必要性に応じて選択します。
  • パフォーマンス重視: Yarn BerryのPnPモードは、インストール速度とディスク使用量の両面で非常に高いパフォーマンスを発揮します。ただし、互換性課題を考慮する必要があります。

チーム開発での合意形成

最も重要なのは、チーム全体でどのパッケージマネージャーを使用するか合意することです。一貫性のないツール使用は、node_modulesの不整合やビルドエラーの原因となり、開発効率を著しく低下させます。.npmrc.yarnrc.ymlなどの設定ファイルを共有し、CI/CDパイプラインも統一することで、スムーズな開発を実現できます。

開発者からよくある質問(FAQ)

Q1: 結局、どちらを使うべきですか?

A1: 一概に「これ」という正解はありません。

  • シンプルさと広範な互換性を求めるならnpmが最も安全で一般的な選択です。特にJavaScript開発初心者や、多くの既存プロジェクトに携わる場合はnpmから始めるのが良いでしょう。
  • モノレポ開発や最先端のパフォーマンス、厳密な依存関係管理を追求するならYarn (特にBerry) が強力な選択肢です。ただし、学習コストや一部ツールとの互換性を考慮する必要があります。
  • Corepackを活用すれば、プロジェクトごとに最適なツールを透過的に使い分けられます。

Q2: 既存プロジェクトでパッケージマネージャーを切り替えるべきですか?

A2: 特別な理由がない限り、推奨されません。

  • パッケージマネージャーの切り替えは、依存関係ツリーの再構築、ロックファイルの変更、CI/CDパイプラインの調整など、多くの作業を伴います。
  • 予期せぬビルドエラーやランタイムエラーが発生するリスクがあります。
  • 切り替えることで得られるメリット(例: 劇的なパフォーマンス向上、特定機能の利用)が、そのリスクとコストを上回る場合にのみ検討すべきです。

Q3: npm installyarn installの違いは?

A3: 基本的な機能は同じで、プロジェクトのpackage.jsonに基づいて依存関係をインストールします。しかし、内部的な動作や生成されるロックファイルが異なります。

  • npm: package-lock.jsonを生成し、node_modulesにパッケージを展開します。
  • Yarn Classic (v1): yarn.lockを生成し、node_modulesにパッケージを展開します。
  • Yarn Berry (v2+): yarn.lockを生成しますが、デフォルトではnode_modulesを生成せず、PnPモードで依存関係を解決します。 ※いずれのコマンドも「依存関係をインストールする」という目的は同じですが、内部の依存解決方式と再現性の担保方法が異なります。

Q4: package-lock.jsonyarn.lockを両方コミットしても大丈夫?

A4: いいえ、絶対にしてはいけません。

  • これらロックファイルは、それぞれnpmとYarnが依存関係ツリーを決定論的に再現するために使用するものです。
  • 両方をコミットすると、どちらのツールを使うべきか混乱が生じ、依存関係の競合や不整合の原因となります。
  • プロジェクトで使用するパッケージマネージャーに合わせて、いずれか一方のみをコミットし、もう一方は.gitignoreに追加してください。

Q5: pnpmはどういう位置づけですか?

A5: pnpmは、npmとYarnの良い点を組み合わせ、さらにディスク使用量とインストール速度を最適化した新しいパッケージマネージャーです。

  • ハードリンクとシンボリックリンクを活用することで、異なるプロジェクト間で同じバージョンのパッケージを共有し、ディスク使用量を大幅に削減します。
  • node_modulesの構造がよりフラットになり、ファントム依存関係(package.jsonに記載されていないが、node_modulesに存在する依存関係)の問題を防ぎます。
  • 特に大規模なモノレポ環境でその真価を発揮し、npmやYarnの強力な代替手段として注目を集めています。Corepackもpnpmをサポートしており、将来的な選択肢として非常に有望です。

このように、npmとYarnはそれぞれ独自の進化を遂げ、JavaScriptエコシステムに多様な選択肢を提供しています。開発者は、プロジェクトの要件、チームのスキルセット、そして最新のトレンドを考慮しながら、最適なパッケージマネージャーを選択していくことが求められます。


以上で本記事の解説を終わります。
よいITライフを!
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