
1970〜80年代に多くのベンダーが独自の通信プロトコルを使用していたため、機器同士の互換性がなく「ネットワークの孤島化」が大きな問題となっていました。国際標準化機構(ISO)は、この課題を解決し、異なるメーカーの機器でも通信できる共通ルール(共通言語)を定めるために、1984年にOSI参照モデルを策定しました。
OSI参照モデルとは
🌐 OSI参照モデル
ネットワーク通信の7階層構造
🏝️ ネットワークの孤島化問題
問題:各ベンダーが独自の通信プロトコルを使用 → 機器同士の互換性なし
解決:ISO(国際標準化機構)が共通ルール「OSI参照モデル」を策定
コンピューターが通信するために利用するネットワークの機能を7つの階層に分類して、整理したモデルのことです。
国際標準化機構(ISO)によって策定されています。
標準化の重要性
OSI参照モデルは標準化の土台として機能し、互換性の確保、トラブルシューティングの容易化(どの層に問題があるか切り分けやすい)、教育や理解の促進に不可欠です。この定義がないと、機器メーカーによって制御方法がバラバラになり、相互接続ができなくなる可能性があります。
OSI参照モデルを理解する最大のメリットは、実務でのトラブルシューティング能力向上にあります。ネットワーク障害が発生した場合、モデルを基準に問題を切り分けることで、効率的な解決策を見つけることができます。例えば、Webサイトにアクセスできない時、L1(ケーブル抜け)の問題か、L3(ルーティングの問題)か、L7(Webサーバーの問題)かを体系的に切り分けられます。
7層からなるOSI参照モデル
WWW、メール、ファイル転送
データ形式の統一
アプリケーション間のデータ交換管理
エラー訂正
IPアドレスで経路決定
MACアドレス使用
物理媒体での送受信
以下の通り、第7層から第1層まであります。
階層 | 名称 | 概要 | 役割 |
---|---|---|---|
第7層 | アプリケーション層 | アプリケーション | ユーザーとネットワーク間のやり取りを管理する。 ユーザーが直接触れる通信の窓口。 利用例: WWW、メール、ファイル転送、ウェブ閲覧。 プロトコル: HTTP、FTP、SMTP、POP3、IMAP、DNS Telnet、etc |
第6層 | プレゼンテーション層 | データの表現形式 | データ変換や暗号化・復号化、データ圧縮。 データ形式の統一を行う層。 アプリケーション層がデータを理解できるようにする。 利用例: データ暗号化、文字コード変換、データ圧縮 プロトコル:JPEG、MPEG |
第5層 | セッション層 | 通信手段 | 通信セッションの確立、管理、終了を行う層。 異なるアプリケーション間でのデータ交換を管理。 利用例: セッション管理プロトコル、RPC プロトコル:SSL/TLS |
第4層 | トランスポート層 | エンド間の通信制御 | データの分割と再構築、信頼性の確保。 エラー訂正を行う。 プロトコル:TCP、UDP |
第3層 | ネットワーク層 | データを送る相手を決め 最適な経路で送信 | 異なるネットワーク間でのデータのルーティングや転送を行う層。 IPアドレスを使用してデータの経路を決定。 利用例: IPアドレス、ルーター プロトコル:IP、ARP、ICMP、IPsec |
第2層 | データリンク層 | 機器同士の通信を実現 | 直接的に接続された機器同士の通信を実現する。 利用例: MACアドレス、イーサネット、Wi-Fi プロトコル:PPP、フレームリレー、イーサネット |
第1層 | 物理層 | 物理的な接続、電気信号 | 電気信号や光信号、物理的な接続を扱う層。 データを物理的媒体を通じて送受信する。 利用例: イーサネットケーブル、USB、光ファイバー プロトコル: IEEE 802.3(イーサネット)、IEEE 802.11(Wi-Fi) |
各階層に対応する機器
🔧 各階層の対応機器
🌐 ゲートウェイ
📡 ルータ
🌉 ブリッジ
📶 リピータ
各階層は以下機器に対応しています。
階層 | 名称 | 機器 |
---|---|---|
第7層 | アプリケーション層 | ゲートウェイ |
第6層 | プレゼンテーション層 | ゲートウェイ |
第5層 | セッション層 | ゲートウェイ |
第4層 | トランスポート層 | ゲートウェイ |
第3層 | ネットワーク層 | ルータ |
第2層 | データリンク層 | ブリッジ |
第1層 | 物理層 | リピータ |
OSI参照モデルの覚え方(語呂合わせ)
🧠 語呂合わせで覚えよう!
ア-プリ・プ-レゼン・セ-ッション・ト-ランス・ネ-ット・デ-ータ・ブ-ツリ(物理)
機器の覚え方
物理→リピータ・データ→ブリッジ・ネット→ルータ・上位層→ゲートウェイ
順番の覚え方
階層の順番は語呂合わせを使うと覚えやすいです。
第7層から順番に各頭文字でアプセトネデブ
と語呂で覚えるのがおすすめです。
ア
:アプリケーション層(第7層)プ
:プレゼンテーション層(第6層)セ
:セッション層(第5層)ト
:トランスポート層(第4層)ネ
:ネットワーク層(第3層)デ
:データリンク層(第2層)ブ
:物理層(第1層)
各層と機器の覚え方
各層と対応する機器は、第1層からブリデブネルゲー
で覚えます。
ブリ
:物理層⇒リピータデブ
:データリンク層⇒ブリッジネル
:ネットワーク層⇒ルータゲー
:以降の層⇒ゲートウェイ
TCP/IPとの違い
特徴:理論重視の教育モデル
インターフェース層
特徴:実装重視の実用モデル
OSI参照モデルは理論重視のモデル(教育的モデル)であり、TCP/IPモデルは実装重視のモデル(実用モデル)として位置づけられます。
OSI参照モデルとTCP/IPの主な違いは以下の通りです。
- OSI参照モデルが7つの階層であるのに対し、TCP/IPモデルは4つの階層で構成。
- OSI参照モデルよりも、効率的かつ現実的な仕様となっているのがTCP/IPモデル。
OSI参照モデルと各階層との対比は以下表の通りです。
階層 | 名称(OSI参照モデル) | 階層 | 名称(TCP/IPモデル) |
---|---|---|---|
L7 | アプリケーション層 | L4 | アプリケーション層 |
L6 | プレゼンテーション層 | L4 | アプリケーション層 |
L5 | セッション層 | L4 | アプリケーション層 |
L4 | トランスポート層 | L3 | トランスポート層 |
L3 | ネットワーク層 | L2 | インターネット層 |
L2 | データリンク層 | L1 | ネットワークインターフェース層 |
L1 | 物理層 | L1 | ネットワークインターフェース層 |
TCP/IPモデルでは、OSIモデルのL5(セッション層)、L6(プレゼンテーション層)、L7(アプリケーション層)の3層が、TCP/IPのアプリケーション層(L4)に集約されています。これは、実装上これらの機能がアプリケーションに統合されることが多いためです。
実際のネットワーク環境ではTCP/IPモデルが主に使用されています。しかし、トラブルの切り分けや設計、教育の現場では、OSI参照モデルの7階層構造が「共通言語」として依然として重要です。
基本情報・応用情報過去問
過去問を解いて、理解度を深めましょう。
基本情報技術者試験ドットコム等のリンクを載せておきます。
基本情報技術者平成23年秋期 午前問37
基本情報技術者平成24年秋期 午前問34
基本情報技術者平成27年秋期 午前問31
ソフトウェア開発技術者平成19年秋期 午前問54
応用情報技術者平成22年春期 午前問36
ネットワークスペシャリスト平成27年秋期 午前Ⅱ 問3
以上で本記事の解説を終わります。
よいITライフを!