インターネットの進化を理解する上で、Web1、Web2、Web3という3つの段階を把握することは重要です。インターネットの進化は、以下の3つの段階で理解できます。
- Web1 (静的): Read(読む) が中心の情報提供の時代。
- Web2 (動的・中央集権的): Read + Write(読む+書く) が中心となり、ユーザーがコンテンツを生成・共有する時代。しかし、プラットフォーム依存や個人情報保護の課題も発生。
- Web3 (非中央集権的): Read + Write + Own(読む+書く+所有する) を目指す、未来のインターネット。ブロックチェーンやNFTといった技術でWeb2の課題解決を図る。
本記事では、これら3つのWebの違い、特徴、活用方法を解説し、Web3の可能性を理解するための知識を提供します。
黎明期のWeb:Web1の時代(Read - 読むだけのWeb)
Webの進化は、一連のパラダイムシフトを伴って進んできました。まずは、Webの黎明期であるWeb1の時代(主に1990年代〜2000年代前半)に焦点を当てます。この時代の最大の特徴は 「Read(読む)」 ことに特化していた点です。
Web1の定義と特徴
Web1は、一般的に1991年から2004年頃までの期間を指します。インターネットの初期段階であり、Webサイトは主に静的な情報を提供する役割を担っていました。
- 一方通行の情報発信(Read): ユーザーは情報を検索し、閲覧することが主な目的でした。コメント機能や「いいね」ボタンのような双方向の仕組みは一般的ではありませんでした。
- 構造化されていないWeb: Webサイトのデザインや技術的な実装方法はサイトごとに大きく異なり、統一された標準(モダンなUI/UX)はまだ確立されていませんでした。
- 静的なコンテンツ: 現代のように頻繁にタイムラインが更新される仕組みではなく、一度公開された情報は長期間変更されないことが一般的でした。
例: 1996年頃の企業Webサイトの典型的な構造。
<!DOCTYPE html><html><head> <title>株式会社サンプル</title></head><body> <h1>株式会社サンプル</h1> <p>当社の製品とサービスについてご紹介します。</p> <img src="sample_product.jpg" alt="サンプル製品"> <p>お問い合わせ:info@sample.com</p></body></html>このコードのように、Web1時代のサイトはHTMLの基本的な構造が中心でした。CSSによる装飾やJavaScriptによる動的な機能(クリックで画面遷移せずに内容が変わる等)は、技術としては存在し始めていましたが、現在のようにリッチなアプリケーションとして利用されることはほとんどありませんでした。
Web1の課題と限界
Web1の時代は、Webの基礎を築いた重要な時期でしたが、「情報の送り手」と「受け手」が明確に分断されており、ユーザーからのフィードバックを得にくいという課題がありました。これが次のWeb2への進化を促す要因となりました。
ユーザー参加型Webの隆盛:Web2の時代(Read + Write - 参加するWeb)
2005年頃から現在に至るまで、インターネットの主流となっているのがWeb2です。この時代の特徴は、「Read(読む)」に加え、「Write(書く・発信する)」が可能になったことです。
Web2の定義と特徴
Web2では、ユーザーは単なる受信者ではなく、発信者となりました。ブログ、SNS、動画投稿サイトなどを通じて、誰もが世界に向けて情報を発信できるようになったのです。
- ソーシャルメディアの普及: Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどのプラットフォームが登場し、双方向のコミュニケーションが爆発的に普及しました。
- ユーザー生成コンテンツ(UGC): プロのメディアだけでなく、個人が作成したコンテンツ(口コミ、動画、ブログ記事)がWeb上の情報の多くを占めるようになりました。
- GAFAMの台頭: Google, Amazon, Facebook (Meta), Apple, Microsoftといった巨大IT企業がプラットフォームを提供し、そこにユーザーが集まる構造が確立されました。
Web2のビジネスモデルと課題
Web2は利便性を劇的に向上させましたが、ビジネスモデルの構造上、新たな課題も生まれました。
- 広告モデルと個人データ: Web2の多くのサービスは無料で利用できますが、その対価としてユーザーは「行動データ」や「個人情報」を提供しています。プラットフォーム側はこのデータを分析し、広告を配信することで収益を得ています。
- 中央集権的な管理: データは巨大テック企業のサーバーに集約・管理されています。これにより、プライバシーの懸念や、プラットフォームの一存でアカウントが停止される(BANされる)リスク、いわゆる「プラットフォーム依存」の問題が顕在化しました。
この「特定企業へのデータの集中」と「プライバシー問題」を解決するアプローチとして登場したのが、Web3です。
分散型Webの到来:Web3の時代(Read + Write + Own - 所有するWeb)
Web3は、Web2の課題を克服するために生まれた、次世代のインターネット概念です。その最大の特徴は、「Read(読む)」「Write(書く)」に加え、「Own(所有する)」が可能になる点です。
Web3の定義と特徴
Web3という言葉は、イーサリアムの共同創設者Gavin Wood氏によって2014年に提唱されました。その後、2020年代に入りブロックチェーン技術の浸透とともに広く認知されるようになりました。
Web3では、ブロックチェーン技術を活用することで、特定のプラットフォームに依存せず、ユーザー自身がデータや資産を管理(所有)します。
- 分散型アーキテクチャ: データは特定の企業のサーバーではなく、ブロックチェーン上の分散ネットワークで管理されます。
- デジタルデータの所有権 (Own): これまでコピーが容易だったデジタルデータに対し、NFT(非代替性トークン)技術を使うことで「唯一無二の所有権」を証明できるようになりました。
- ウォレットによるログイン: GoogleやFacebookのアカウントでログインする代わりに、自身の「ウォレット(Metamaskなど)」を接続してサービスを利用します。個人情報はユーザーの手元にあり、必要に応じて開示範囲をコントロールできます。
Web3の主な活用事例
- DeFi(分散型金融): 銀行や証券会社を介さず、プログラム(スマートコントラクト)によって自動的に貸借や取引を行う金融サービス。
- NFT(Non-Fungible Token): デジタルアートやゲームアイテムなどを、資産として保有・売買できます。
- DAO(分散型自律組織): 社長や管理者が存在せず、トークンを持つメンバーの投票によって運営方針が決まる新しい組織形態。
Web3の現状と課題
Web3は理想的な概念ですが、Web2を完全に置き換える段階には至っておらず、現在はWeb2とWeb3が共存する過渡期と言えます。
- スケーラビリティと操作性: 現在のWeb3サービスは、Web2に比べて処理速度が遅かったり、操作(ウォレット管理など)が難解であったりする課題があります。
- 法整備とセキュリティ: 新しい技術であるため、法規制が追いついていない部分や、ハッキングのリスクに対する個人のリテラシーが求められます。
Web1 Web2 Web3 まとめ:比較と未来予測
Web1からWeb3への進化は、インターネットにおける「主導権」の変化とも言えます。それぞれの違いを整理しましょう。
Web1、Web2、Web3の比較表
| 特徴 | Web1 (1990-2004頃) | Web2 (2004年頃から-現在) | Web3 (2020年代-未来) |
|---|---|---|---|
| ユーザーの行動 | Read (読む) | Read + Write (読む+書く) | Read + Write + Own (読む+書く+所有する) |
| 主な特徴 | 静的コンテンツ、情報収集 | ユーザー参加型、SNS、クラウド | 分散型、ブロックチェーン、トークンエコノミー |
| データの管理 | サイト運営者のサーバー | プラットフォーム企業のサーバー (GAFAM等) | ブロックチェーン / ユーザー自身のウォレット |
| 主導権 | 発信者 (企業・組織) | プラットフォーム企業 | ユーザー個人 |
| 代表的な技術 | HTML, リンク | スマホアプリ, API, AJAX | ブロックチェーン, スマートコントラクト, NFT |
Web3が描く未来
Web3は、「Web2の否定」ではなく「Web2の課題に対する解決策の一つ」として機能していくと考えられます。
例えば、日常的な高速な通信や大量の動画閲覧にはWeb2の技術(クラウドサーバー)が適しており、資産の管理やアイデンティティの証明にはWeb3の技術(ブロックチェーン)が適しています。
今後は、Web2の使いやすさとWeb3の透明性・所有権の概念が融合し、ユーザーが裏側の技術を意識せずに、より安全で自由なインターネットを利用できる時代が到来するでしょう。Web1、Web2、Web3の違いを正しく理解することは、この新しい時代の波に乗り、ビジネスや生活を豊かにするための第一歩となります。
以上で本記事の解説を終わります。
よいITライフを!